2026.09.28
仕事は塗り絵にもみえる【後編】
前回は仕事を教えること、教わることを「塗り絵」に例えて考えてみました。
教える側が持っている経験も、仕事全体の一部にすぎない。
一方で、教わる側も、ある程度経験を重ねなければ見えてこないものがあります。
つまり、お互いに見えている範囲は違い、どちらか一方だけが常に正しいとは限りません。
これは、仕事上の人間関係にも同じことが言えるように思います。
何か問題やすれ違いが起きたとき、原因を「相手が悪い」の一言で片づけてしまってよいのでしょうか。
■ 人間関係は「10対0」にはならない
仕事上の人間関係で何か問題が起きたとき、その原因が完全に一方だけにあるということは、実際にはそれほど多くありません。
上司が悪い。
部下が悪い。
会社が悪い。
クライアントが悪い。
もちろん、明らかに相手側に大きな問題があることもあります。
しかし、「相手が悪い」で思考を止めてしまえば、そこで自分自身の成長も止まってしまいます。
たとえば相手に8の問題があったとしても、
「では、自分の2は何だったのだろう」
と考えてみる。
部下が理解してくれないのであれば、本人の努力不足だけでなく、自分の伝え方に改善できるところはなかったか。
上司の指示が不十分なのであれば、それを嘆くだけでなく、自分から確認できることはなかったか。
クライアントが思うように動いてくれないのであれば、相手を責めるだけでなく、こちらの説明の仕方や仕組みに工夫できるところはなかったか。
これまで多くの人と仕事をしてきて感じるのは、物事を常に他責だけで考えている人は、なかなか成長しにくいということです。
ただし、これは「何でも自分が悪いと思え」という話ではありません。
相手の問題は、相手の問題として冷静に認識する。
そのうえで、
「では、自分に変えられる部分は何だろう」
と考える。
この姿勢こそが、経験を次の仕事に生かすことにつながるのだと思います。
■ だからこそ、中小企業にはまだ可能性がある
中小企業を取り巻く環境は、決して楽観できるものではありません。
人手不足、人口減少、物価高、賃金上昇、技術の進歩。
こうした外部環境の多くは、一企業の努力だけで変えられるものではありません。
しかし、変えられないものを嘆き続けても、会社は良くなりません。
だからこそ私は、中小企業にはまだ大きな可能性があると思っています。
その可能性は、「ヒト」にあります。
中小企業は組織が小さいからこそ、一人ひとりの成長が会社を変えます。そして、リーダーの姿勢が組織全体に与える影響も大きいのではないでしょうか。
リーダー自身が、自分の考えを100%正しいと思わないこと。
うまくいかないことを、社員や顧客、景気や時代のせいだけにしないこと。
そして、人が育つには時間がかかるという当たり前のことを受け入れ、その時間軸に耐えること。
昨日より少しでもいい仕事をしようと、自分自身が学び続けること。
その姿を、言葉だけではなく背中で見せ続けること。
そうすれば、最初は小さかった一人ひとりの「塗れる範囲」が、少しずつ広がっていきます。
それが何人分も重なったとき、会社という一枚の絵も、少しずつ変わっていくのだと思います。
外部環境を変えることはできなくても、自分たちの仕事の仕方は変えられる。
他人を思いどおりに変えることはできなくても、自分自身の接し方は変えられる。
そして、人は時間をかけながら成長していくことができる。
中小企業を構成する最も重要なものが「ヒト」であるならば、「ヒト」は中小企業が抱える最大の難しさであると同時に、最大の可能性でもあります。
完成した人もいなければ、完成した会社もありません。
教える側も、教わる側も、それぞれが少しずつ塗れる範囲を広げながら、一枚の絵をつくっていく。
きっと仕事とは、そういうものなのだと思います。
仕事という塗り絵に、きっと完成図はありません。
それでも今日より少し良い色を重ねながら、私自身もまた、その続きを塗っていきたいと思います。
